マーケティングを“線”で描く時代へ。『デジタルマーケティングの教科書』に学ぶ戦略と実践

“データ×チャネル×関係性”で成果を生み出す、現代マーケティングの思考法

SNS運用、広告配信、SEO、メールマーケティング——デジタル施策は数え切れないほどありますが、「結局どれをどう組み合わせれば成果が出るのか」が見えないという声は少なくありません。

多くの担当者が抱える課題は、次の3つに集約されます。

  • 施策がバラバラで全体像がない
  • データは取っているが活かせていない
  • 顧客との関係が一度きりで終わってしまう

デジタルマーケティングの教科書』は、そんな“点で終わる施策”を“線でつなぐ戦略”へと昇華させるための一冊です。

本記事では、本書の概要・印象に残ったポイント・実務で活かせるヒントを紹介します。

タイトルデジタルマーケティングの教科書
著者牧田 幸裕(まきた ゆきひろ)
出版社東洋経済新報社
発売日2017年9月15日
ページ数212ページ
価格2,200円(税込)
ジャンルマーケティング/ビジネス実務
目次

本書の概要

本書は、従来型マーケティング(4P、マス広告中心)から、デジタル時代における「関係構築型マーケティング」への進化を体系的に解説しています。

著者の牧田氏は、実務とアカデミアの両方でマーケティングを研究・実践してきた人物。“デジタルの本質はツールではなく、顧客との関係をどう再構築するかにある”という視点で、理論と実践を行き来しながら解説しています。

主なテーマは以下の通りです。

  • データドリブンな意思決定
  • チャネル統合(オムニチャネル/クロスチャネル)
  • 顧客体験(CX)の最適化
  • 継続的な関係構築とロイヤルティ形成

つまり本書は、「マーケティングを部分最適ではなく、全体設計として捉えるための教科書」と言えます。

本書のポイント

データを“測るため”ではなく“活かすため”に使う

データ分析の目的は、数字を並べることではなく「顧客の行動や感情の変化を理解し、次の打ち手を見つけること」。

本書では、データを「観察→洞察→行動設計」に変換するプロセスを重視しています。

“数字の羅列に終わる分析ではなく、行動を変えるための仮説を立てよ。”

この一文は、多くの現場担当者にとって核心を突くメッセージです。

チャネルを“横断的に設計する”という考え方

SNS、検索、広告、オウンドメディア、イベント…。ユーザーとの接点は複数ありますが、ほとんどの企業が「施策単位」で運用してしまっています。

本書では、「チャネルごとの最適化」ではなく「顧客体験の一貫性」を重視する考え方を提唱しています。

オンラインとオフラインの境界が曖昧になる中で、ユーザーにとって違和感のない“シームレスな体験設計”が必要だと説いています。

セグメントではなく“個”からマーケティングを設計する

従来のマーケティングは「属性で区切る」発想でしたが、デジタル化によって「行動からつくる」発想が主流になりつつあります。

“マーケティングはセグメントを分けることではなく、個々の顧客を理解することから始まる。”

この章では、パーソナライズドマーケティングやOne to Oneの考え方に触れつつ、個の理解を中心にした新しいマーケティング設計を提案しています。

読後の印象と実践へのヒント

本書を読み終えて最も印象に残るのは、「マーケティングは設計の学問である」という一貫した姿勢です。

  • 施策を点で終わらせず、線でつなぐこと
  • 顧客を数値としてではなく、関係として捉えること
  • 継続的な改善サイクルを仕組み化すること

この3つを実行するだけで、マーケティングは大きく変わります。

特に、WebやSNSを中心に活動する企業にとっては、「個別施策から全体設計へ」視点を移すことが、次の成長につながるはずです。

この本をおすすめしたい人

本書は、以下のような人に特におすすめです。

  • デジタル施策を実施しているが、成果が安定しない担当者
  • 顧客体験を軸にしたマーケティングを構築したい人
  • Webメディア、SNS、広告、CRMなど複数チャネルを扱うマーケター
  • これからマーケティングの全体像を体系的に学び直したいビジネスパーソン

一方で、「最新ツールの活用法」や「具体的な広告運用テクニック」を求める読者には少し抽象的に感じるかもしれません。

本書は“戦術書”ではなく、“戦略と設計のための教科書”です。

まとめ:マーケティングを「点」ではなく「流れ」で捉える思考へ

『デジタルマーケティングの教科書』は、デジタル時代のマーケティングを“仕組み”として再定義する一冊です。

顧客データ、チャネル、体験を個別に最適化するのではなく、それらを「つなぎ合わせて流れを設計する」ことが成果に直結します。

「マーケティングは、断片を積み上げる作業ではなく、関係を育てるプロセスである。」

この言葉が象徴するように、本書は“施策疲れ”している現場に新たな視点を与えてくれます。

短期的な効果にとらわれず、長期的な信頼と価値を築くためのマーケティング思考を身につけたい方に、ぜひ手に取ってほしい一冊です。

目次