2万人分のキャリアデータを元に、ITエンジニアが「後悔しない転職」を設計するための実践ガイド
「エンジニアは転職すれば年収が上がる」「転職すればキャリアが広がる」といった常識は、時に安易な思い込みになりがちです。
しかし、実際には「転職しても後悔する」「年収が伸びない」と感じるエンジニアも少なくありません。
本書『ITエンジニアの転職学』は、ITエンジニア2万人のキャリア・年収データを分析し、
- なぜ同じスキルでも年収に差が出るのか
- 年収600万円・800万円・1000万円を突破するには何が必要か
- 転職すべきか否か、どんな企業に移るべきか
といった具体的な問いに答える一冊です。
特に、エンジニア採用やキャリア支援に関わる人、発信メディアを運営する人にとっても「転職=キャリア戦略」の捉え方に新たな示唆を与えてくれます。
| タイトル | ITエンジニアの転職学 2万人の選択から見えた、後悔しないキャリア戦略 |
|---|---|
| 著者 | 赤川 朗(あかがわ あきら) |
| 出版社 | 講談社 |
| 発売日 | 2025年10月24日 |
| ページ数 | 256ページ |
| 価格 | 2,420円(税込) |
| ジャンル | キャリア/転職/ITエンジニア |
本書の概要
本書は、転職エージェントとして累計多数のITエンジニアと向き合ってきた著者が、2万人規模のデータとその分析から導き出された「ITエンジニアのキャリア戦略」を体系化したもの。
主な構成は次の通りです。
- 転職で年収が上がるという“誤解”の正体を解説
- 年収600万・800万・1000万円を超えるための具体的な方法を紹介
- 業種・年代別の戦略、転職判断、市場価値の算出、職務経歴書、面談・交渉、転職後の適応までを網羅
つまり、「転職=逃げ道」ではなく、「キャリアを構築するための設計行為」であるという視点が貫かれています。
本書のポイント
特に印象に残ったポイント・要点を紹介します。
「年収分布を理解し、自分の立ち位置を知る」
「同じ“ITエンジニア”という肩書きでも、年収に倍以上の差が出る」。本書はこの現実を、2万人のデータをもとに鮮明に示しています。
この視点を持つことで、単に“転職すれば上がる”という幻想ではなく、「どの集団に属すか/どこから挑むか」を戦略的に考えられます。
「年収600/800/1000万円の壁と能力モデル」
具体的に「年収600万円・800万円・1000万円を超えるために必要な6つの能力」「8つのキャリアパス」といったモデルを紹介しています。
このような“数値と能力を結びつけた設計”は、キャリア支援やメディア発信の現場でも「読者/候補者にどう成長軸を示すか」のヒントになります。
「転職か現職維持かをデータで判断する」
「転職するべきか」「どんな企業に移るべきか」「現職に残る選択肢も含めた戦略」を丁寧に解説しています。
つまり、転職自体を目的化せず、「どこに行けば価値が出せるか」「自分の市場価値を正確に推定できるか」が鍵だというメッセージです。
読後の印象と実践へのヒント
本書を読んで、キャリア設計における「思考の質」がいかに成果に直結するかを再確認しました。
- データで現実を把握すること
- 能力モデルに基づいて自分を磨くこと
- 転職/維持という選択を戦略的に考えること
特に、
- 採用やキャリア支援を行う立場なら、「候補者に示す成長モデル」を提示するための設計材料になる。
- 自身がエンジニアとしてキャリアを描くなら、「今いるポジション」「目指すポジション」「必要な能力」が可視化できる。
ただし注意点としては、全ての能力項目を一気に高めようとすると焦燥につながる可能性がありますまずは「自分のレベル+狙う年収帯」に合った“1〜2点”を重点的に改善することで、現実味のある戦略に落とし込むことをお勧めします。
この本をおすすめしたい人
本書は、特に以下のような方におすすめです。
- ITエンジニア/インフラ/クラウド/開発職の方で「転職を検討している」または「将来的にキャリアを設計したい」と考えている人。
- エンジニア採用・キャリア支援・メディア運営に関わる人で、「読者/候補者の成長モデルを示したい」「転職=価値提供の流れを設計したい」と考えている人。
- 年収を明確に意識しながらキャリアを描きたい人、変化の激しいIT業界で自分の価値を維持・向上させたい人。
一方で、「すぐに別の会社に入れば年収が倍になる」といった短絡的な期待を持つ人には、やや地に足のついた視点だと感じる可能性があります。長期視点での“キャリア設計”を志す方向けの内容です。
まとめ:データ×能力×選択で、エンジニアのキャリアを「後悔しないもの」に
『ITエンジニアの転職学 2万人の選択から見えた、後悔しないキャリア戦略』は、エンジニアとしての“転職”と“キャリア”を、感覚ではなく設計し直すための一冊です。
- 転職だけが答えではない
- 能力モデルを明確に描くことで、年収という結果に近づける
- 現職維持も選択肢の一つとして、戦略的に考える
キャリアに迷いを感じている、あるいは候補者/読者に“キャリア設計”を示したいと考えているなら、この本はその第一ステップに適しています。

