クラウド利用が当たり前になった一方で、「気づいたらクラウドの利用料が想定以上に膨らんでいた」という課題を抱える企業は少なくありません。従量課金というクラウドの特性上、使い方次第でコストが大きく変動するためです。こうした課題に対応する考え方として注目されているのが「FinOps」です。
ここでは、FinOpsとは何か、その仕組みと、なぜ今求められているのかを解説します。
- FinOpsとは何か、注目される背景
- FinOpsの仕組み・進め方
- FinOpsが求められている理由
1.FinOpsとは
FinOpsとは、「Finance」と「Operations」を組み合わせた言葉で、クラウドの利用料を可視化・最適化するための考え方・実践を指します。単なるコスト削減の取り組みではなく、エンジニアリング部門・財務部門・事業部門が横断的に連携し、クラウドの価値とコストのバランスを取っていく文化・仕組みという位置づけが特徴です。
従来、クラウドのコスト管理は情報システム部門や財務部門が事後的に請求額を確認するだけで終わることが多くありました。FinOpsは、コストの状況をリアルタイムに近い形で可視化し、開発・運用を行うエンジニア自身がコストを意識しながら意思決定できるようにする点で、従来の管理手法とは異なります。
2.FinOpsの仕組み・進め方
FinOpsは、一般的に次のようなサイクルを繰り返しながら進められます。

可視化(Inform)
まず、どの部門・どのサービス・どのリソースにどれだけのコストがかかっているかを可視化します。クラウド利用料をチーム・プロジェクト単位で正確に配分(コストアロケーション)できる状態を整えることが土台になります。
最適化(Optimize)
可視化されたデータをもとに、無駄なコストを削減する取り組みを行います。利用状況に対して過剰なスペックのリソースを見直す「適正化(ライトサイジング)」や、長期利用が見込まれるリソースに割引契約を適用する、利用の少ない時間帯のリソースを止めるなど、様々な手法があります。
運用(Operate)
最適化を一度きりで終わらせず、継続的な運用として定着させる段階です。コストに関する目標(KPI)を設定し、定期的にレビューする体制を作ることで、コスト意識が組織文化として根付いていきます。
このサイクルを、「可視化→最適化→運用」と一方向に進めるのではなく、継続的に繰り返していく点がFinOpsの特徴です。
3.FinOpsが求められている理由
クラウド利用の拡大とコストの複雑化
多くの企業でクラウド活用が進む一方、従量課金という特性上、利用量の増減がそのままコストに直結します。複数のクラウドサービスを併用する「マルチクラウド」環境では、コスト構造がさらに複雑になります。
部門ごとの分断されたクラウド利用
クラウドは各チームが個別に契約・利用を始めやすいため、全社的な統制が働かないまま利用が広がり、気づかないうちにコストが膨らんでしまうケースがあります。FinOpsは、こうした分断された利用状況を横断的に可視化し、統制を効かせる役割を担います。
エンジニアリングと財務の連携不足
コストを最も左右できるのは、実際にクラウドリソースを設計・運用するエンジニアです。しかし従来、コスト情報は財務部門が管理し、エンジニアには共有されないことが多くありました。FinOpsは、この情報の壁を取り払い、エンジニア自身がコストを踏まえた判断を行えるようにします。
4.FinOpsに関わる取り組みの動向
FinOpsという考え方を体系化し、普及を進める業界団体・コミュニティも存在しており、コスト可視化・最適化に関するベストプラクティスの共有が進んでいます。
また、主要クラウド事業者は、利用料の可視化やコスト最適化を支援する機能を自社のクラウドサービスに標準的に組み込む動きを強めています。具体的な機能や製品の詳細は変化が速い分野のため、実際に取り組む際は各クラウド事業者の最新情報を確認することをおすすめします。
5.まとめ
FinOpsとは、クラウドのコストを可視化し、エンジニアリング・財務・事業部門が横断的に連携しながら最適化していく考え方・実践です。可視化・最適化・運用というサイクルを継続的に繰り返すことで、コスト意識を組織文化として根付かせていく点が特徴です。
クラウド利用が拡大し、コスト構造が複雑化する中、FinOpsはクラウド基盤を運用するうえで欠かせない考え方になっていくと考えられます。AIを活用した運用の高度化については[AIOpsとは?基本と仕組みを解説]、AI時代のハードウェア基盤については[GPU基盤とは?基本と仕組みを解説]もあわせてご覧ください。

