プラットフォームエンジニアリングとは?基本と仕組みを解説

DevOpsの次の進化として注目される「プラットフォームエンジニアリング」。開発者が本来の業務であるコーディングに集中できる環境をどう作るのか、その仕組みを解説します。

この概念を実践する職種については[プラットフォームエンジニアとは]で詳しく解説しています。

この記事で分かること
  • プラットフォームエンジニアリングの定義とDevOpsとの関係性
  • IDP(内部開発者プラットフォーム)とGolden Pathという2つの核心的な仕組み
  • 導入のメリットと、よくある失敗パターン(課題)

1.プラットフォームエンジニアリングとは

プラットフォームエンジニアリングとは、ソフトウェア開発者が必要とするツール、インフラ、サービスをセルフサービスで利用できる「内部開発者プラットフォーム(IDP:Internal Developer Platform)」を設計・構築・運用する技術領域です。開発者がインフラの複雑さに対処することなく、ビジネスロジックの開発に集中できる環境を提供することが目的です。

DevOpsとの関係

DevOpsは「開発者もインフラを担当すべき」という思想である一方、プラットフォームエンジニアリングは「専任チームがインフラの複雑さを抽象化し、開発者はセルフサービスで利用すべき」という考え方に立ちます。

この2つは対立する概念ではなく、プラットフォームエンジニアリングはDevOpsが成熟して進化した形として位置づけられています。DevOpsの理想(開発と運用の協業)を実現する上で、専任チームが「プラットフォーム」という製品を提供することで、より多くの開発チームがその恩恵を受けられるようにする、という発展の仕方です。

2.中核となる2つの仕組み:IDPとGolden Path

プラットフォームエンジニアリングを理解するうえで欠かせないのが、次の2つの概念です。

IDP(Internal Developer Platform)

開発者がアプリケーションのライフサイクル全体を通じてコードを作成・デプロイ・保守するために必要な、標準化されたセルフサービスツールとテクノロジーのセットです。一言でいえば、「Amazonで商品を買うように、開発者が必要なインフラを簡単かつ安全に利用できる、社内向けの統合ポータルサイト」といえます。IDPは、標準化されたツール・サービス・インフラへのセルフサービスアクセスを提供することで、開発者が抱える運用上の複雑さと認知的負荷を軽減します。

Golden Path(ゴールデンパス)

組織が推奨する開発の標準経路です。新しいWeb APIを作る、社内向けバッチを用意するといった繰り返しの多い作業に対して、どの構成を選び、どの工程を通り、どの条件を満たせばよいかを開発者に示します。Golden Pathは開発者を縛るためのものではなく、安全かつ効率的に開発を進めるための「近道」として設計されます。プラットフォームエンジニアリングチームは、開発者を「顧客」と捉え、この舗装された道(Paved Road)を用意することで、開発者が本来の価値創造(アプリケーション開発)に集中できるようにします。

代表的なツール:Backstage

IDP構築の代表格が、Spotifyが開発しオープンソース化した「Backstage」です。CNCFでホストされたオープンなプロジェクトで、開発者ポータルの土台として広く採用されており、プラグインによる機能拡張の柔軟性が強みです。ただし、開発者ポータルはIDPの一部にすぎず、Backstageだけを導入してもIDPが完成するわけではありません。

3.プラットフォームエンジニアリングの設計原則

プラットフォームエンジニアリングを実践するうえで、以下の設計原則が重視されます。

  • Product mindset(プロダクトマインドセット)
    プラットフォームを単なる社内ツールではなく、「製品」として設計・運営する考え方です。
  • Paved road approach(舗装された道)
    Golden Pathを整備し、開発の標準化を促進します。
  • Self-service first(セルフサービス優先)
    開発者がプラットフォームチームに都度依頼せず、自分自身で環境を用意できる状態を目指します。
  • Treat developers as customers(開発者を顧客として扱う)
    開発者からのフィードバックを継続的に取り込み、プラットフォームを改善し続けます。

4.メリットと、よくある課題

導入のメリット

IDPとGolden Pathを組み合わせることで、開発者の自律性と組織の統制を両立させたバランスの取れた運用モデルが実現します。運用上の複雑さと認知的負荷が軽減されるだけでなく、一貫性の確保やセキュリティ・コンプライアンスの維持、ソフトウェアデリバリーの加速といった効果が期待できます。

よくある失敗パターン

開発者ポータルを作るだけで終わってしまう

Backstageのようなポータル画面(UI)を立ち上げただけで、プラットフォームエンジニアリングが完成したと誤解されるケースです。セルフサービスの実効性を高めるには、その裏側にあるインフラストラクチャの高度な自動化とオーケストレーションが不可欠です。

過剰設計になってしまう

将来起こりうるあらゆるユースケースに対応しようとして、プラットフォームを過剰に設計してしまうケースです。結果として極めて複雑になり、使い方の習得自体に多大な時間がかかってしまい、本来の目的(開発者の負荷軽減)から逆効果になることがあります

組織はこの2つの間、つまり「過小設計」と「過剰設計」のバランスを取ることが、プラットフォームエンジニアリングの実践における大きな課題とされています。

5.まとめ

プラットフォームエンジニアリングは、DevOpsをさらに一歩進め、専任チームが開発者体験を「製品」として設計する考え方です。IDP(セルフサービスで使える内部開発者プラットフォーム)とGolden Path(推奨される開発の標準経路)という2つの仕組みが中核となり、Backstageのようなツールがその実現を支えます。

導入にあたっては、ポータルを作るだけで終わらせず、裏側の自動化までを含めて設計することと、過剰設計を避けてシンプルさを保つことが成功の鍵になります。この分野を担う職種やキャリアについては[プラットフォームエンジニアとは]、その土台となる[インフラエンジニアとは]もあわせてご覧ください。

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