インフラエンジニアとして働くなかで、「監視や運用・保守の仕事ばかりで、構築や設計に関われない」と悩む方は少なくありません。設計・構築などの上流工程に進むと、任される仕事の幅が広がり、年収も上がりやすくなります。
ここでは、インフラエンジニアが運用・保守から設計・構築へ進む方法を、工程の違いや抜け出しにくい理由から解説します。上流工程で求められるスキルに加えて、今の仕事から始められる5つのステップもまとめました。
この記事で分かること
- 運用・保守と設計・構築の違いと、運用・保守から抜け出しにくい理由
- 設計・構築などの上流工程で求められるスキル
- 運用・保守から上流工程へ進むための5つのステップ
運用・保守と設計・構築の違い
インフラの仕事の工程
インフラエンジニアの仕事は、大きく次の工程に分かれます。このうち、要件定義や設計など、システムをつくる最初の段階に近い工程を「上流工程」と呼びます。
| 工程 | 主な仕事 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 要件定義 | 利用者の数や求められる性能、安全性などの要件をまとめる | 上流 |
| 設計 | 機器の構成や通信の経路、障害への備えを決め、設計書にまとめる | 上流 |
| 構築 | 設計書に沿って、サーバーや機器を設定する | 中流 |
| テスト | 設計どおりに動くか、障害時に切り替わるかを試験する | 中流 |
| 運用・保守 | システムを監視し、障害に対応し、更新や入れ替えを行う | 下流 |
運用・保守は、システムを止めずに動かし続ける大切な仕事です。一方で、決められた手順で作業することが多く、システムの仕組みを考える機会が少ないため、経験の幅が広がりにくい面があります。
インフラエンジニアの仕事の全体像は、[インフラエンジニアとは]で解説しています。
上流工程に進むと変わること
上流工程に進むと、次のような変化があります。
| 項目 | 運用・保守 | 設計・構築 |
|---|---|---|
| 仕事の内容 | 手順書に沿って作業する | 手順書や設計書をつくる側になる |
| 求められる力 | 決められた作業を確実にこなす力 | 仕組みを理解し、構成を考える力 |
| 年収の目安 | 300万〜450万円 | 450万〜800万円 |
| 働き方 | 夜勤や休日のシフトがあることが多い | 日中の仕事が中心になりやすい |
年収は、求人情報をもとにした目安です。
年収の相場は、[インフラエンジニアの年収]で詳しく解説しています。
運用・保守から抜け出しにくい理由
運用・保守から上流工程に進めない理由は、本人の努力だけではないことも多くあります。
- 契約や役割で仕事が決まっている
SESで運用・保守の契約として現場に入っていると、構築や設計の仕事を任されにくい。 - 構築・設計の経験がないと任されない
経験がないと任されず、任されないと経験が積めない、という悪循環が起きやすい。 - 日々の作業で手一杯にな
夜勤やシフト勤務が続き、勉強の時間を取りにくい
こうした状況を変えるには、今の現場でできることと、環境を変えることの両方を考える必要があります。
上流工程で求められるスキル
仕組みを理解する技術力
運用・保守では「手順どおりに作業できること」が求められますが、設計・構築では「なぜその設定にするのか」を説明できる力が求められます。OSやネットワーク、ストレージの仕組みを、コマンドの意味や通信の流れまで理解しておくことが土台になります。
設計書を読む力・書く力
設計・構築では、構成図やパラメーターシート、手順書などの文書を読み書きします。まずは今の現場の設計書を読み、どんな要件から、なぜこの構成になっているのかを考えるところから始めましょう。
要件を聞き出し、調整する力
上流工程では、顧客や社内の利用者から「何を実現したいか」を聞き出し、技術的にできることとすり合わせる力が求められます。技術を、専門家でない人にも分かる言葉で説明する力も大切です。
作業の量と期間を見積もる力
構築や設計では、作業にかかる時間や人数を見積もり、スケジュールを立てる場面が増えます。運用・保守での作業の経験は、どの作業にどれくらい時間がかかるかを見積もるときに活かせます。
運用・保守から上流工程に進む5つのステップ
STEP1:今の現場で一歩上の仕事を引き受ける
まずは、今の現場でできることから始めましょう。たとえば、次のような仕事は、運用・保守の現場でも引き受けやすく、上流工程につながる経験になります。
- 手順書の作成や見直しを担当する
- 障害の一次対応だけでなく、原因の調査まで関わる
- 定型の作業を、スクリプトなどで自動化する
- 設定の変更作業に、作業者として加わる
「この人なら任せられる」と思ってもらうことが、構築の仕事を任される第一歩です。
STEP2:自分で手を動かして構築を経験する
仕事で構築の機会がなくても、自分で環境を作って経験を積めます。AWSなどのクラウドの無料枠でサーバーを立てる、仮想マシンでLinuxのサーバーを構築する、Cisco Packet Tracerでネットワークを組むなど、設計から構築、動作の確認までを一通り自分で試すと、仕組みへの理解が深まります。
STEP3:資格で知識を体系化する
資格の勉強は、上流工程で必要な知識を体系的に身につけるのに役立ちます。運用・保守の経験がある人には、次のような資格がおすすめです。
| 分野 | おすすめの資格 |
|---|---|
| ネットワーク | CCNA、CCNP |
| サーバー | LinuCレベル2、LPICレベル2 |
| クラウド | AWS Certified Solutions Architect – Associate |
| 設計 | ネットワークスペシャリスト試験 |
資格は、社内で構築の仕事を希望するときや、転職するときに、知識があることを客観的に示す材料にもなります。
資格の選び方は、[インフラエンジニアのおすすめ資格一覧]で紹介しています。
STEP4:上司や会社に希望を伝える
構築や設計の仕事をしたいという希望は、上司との面談などで具体的に伝えましょう。資格の取得や、STEP1で引き受けた仕事の成果をあわせて伝えると、次の案件で構築の担当に加えてもらえる可能性が高まります。
STEP5:構築・設計の案件がある職場に移る
希望を伝えても、会社の事業や契約の形から上流工程に進む見込みがない場合は、転職で環境を変えることも考えましょう。元請けのSIerや事業会社、クラウドの企業など、構築や設計の案件を自社で担っている職場を選ぶのがポイントです。
転職の進め方は、[インフラエンジニアの転職]で解説しています。
上流工程に進むときによくある疑問
Q.運用・保守の経験は無駄になる?
無駄にはなりません。運用・保守で障害や日々の作業を経験していると、止まりにくく、運用しやすいシステムを設計するうえで大きな強みになります。設計・構築の面接でも、運用の視点を持っていることは評価されます。
Q.何年くらいで設計・構築に進める?
人や職場によって大きく異なりますが、運用・保守を1〜3年ほど経験してから構築に進む人が多く見られます。年数よりも、仕組みを理解しているか、構築の経験を自分で積んでいるかが大切です。
Q.SESでも上流工程に進める?
進めます。SESでも、構築や設計の案件に参画できる会社はあります。ただし、配属される現場によって担当する工程が決まるため、構築・設計の案件をどれくらい持っている会社かを確かめておくことが大切です。
Q.設計・構築は、運用・保守より大変?
大変さの種類が変わります。夜間の障害対応などは減る一方で、納期に合わせて作業を進めることや、顧客との調整が増えます。仕組みを考え、つくる側に回るため、やりがいや成長を感じやすいという声も多くあります。
Q.資格だけで上流工程に進める?
資格だけで設計・構築を任されることは多くありません。資格で知識を身につけたうえで、自分で環境を構築した経験や、今の現場で引き受けた仕事の実績を組み合わせて伝えることが大切です。
まとめ
運用・保守から設計・構築などの上流工程に進むと、仕事の幅が広がり、年収も上がりやすくなります。
この記事のポイントは次のとおりです。
- 工程の違い
要件定義や設計が上流、構築やテストが中流、運用・保守が下流にあたる。 - 抜け出しにくい理由
契約や役割で仕事が決まっていることや、経験がないと任されない悪循環がある。 - 求められるスキル
仕組みを理解する技術力、設計書を読み書きする力、要件を聞き出し調整する力。 - 進むためのステップ
一歩上の仕事を引き受け、自分で構築を経験し、資格で知識を体系化する。 - 環境を変える
希望を伝えても難しい場合は、構築・設計の案件がある職場へ移ることも考える。
上流工程への道は、今の現場での小さな一歩から始まります。まずは手順書の見直しや障害の原因調査など、一歩上の仕事を1つ引き受けてみましょう。

