経験を積んだインフラエンジニアのキャリアの選択肢の1つが、フリーランスとして独立する道です。設計・構築の経験があれば、会社員のときより高い収入を得られる可能性がある一方で、収入の安定や手続きなど、会社員とは違う責任も増えます。
ここでは、インフラエンジニアのフリーランスとしての働き方を、会社員との違いや主な案件から解説します。単価と年収の目安、独立に必要な条件に加えて、独立までの進め方と注意したいリスクもまとめました。
この記事で分かること
- インフラエンジニアのフリーランスの働き方と、会社員との違い・主な案件
- フリーランスの単価と年収の目安、独立に必要な条件
- フリーランスとして独立するまでの進め方と、注意したいリスク
インフラエンジニアのフリーランスとは
フリーランスの働き方
フリーランスのインフラエンジニアは、会社に雇われるのではなく、企業と業務委託の契約を結び、案件ごとに仕事を請け負う働き方です。インフラの案件では、決められた時間に技術を提供する「準委任契約」が多く、月ごとに決まった報酬(単価)を受け取るのが一般的です。
案件は、フリーランス向けのエージェントの紹介や、知人やこれまでの取引先からの紹介で見つけることが多くあります。働く場所は、客先に常駐する案件と、リモートで働く案件があります。
会社員との違い
| 項目 | 会社員 | フリーランス |
|---|---|---|
| 収入 | 給与。経験や評価に応じて少しずつ上がる | 案件の単価で決まる。経験次第で会社員より高くなる |
| 安定 | 毎月の給与が保証されている | 案件が途切れると収入がなくなる |
| 社会保険 | 会社が半分を負担する | 国民健康保険と国民年金を全額自分で払う |
| 税金の手続き | 会社が年末調整を行う | 自分で確定申告をする |
| 仕事の選び方 | 会社の方針や配属で決まる | 自分で案件を選べる |
| 学びの機会 | 研修や資格の支援がある | 自分で時間とお金をかけて学ぶ |
フリーランスは、自由に案件を選べる分、収入の安定や手続きも自分で担う働き方です。
主な案件
インフラエンジニアのフリーランス向けには、次のような案件があります。
| 案件 | 主な仕事 |
|---|---|
| サーバー・ネットワークの設計・構築 | 社内システムやサービスの基盤の設計・構築 |
| クラウドの設計・移行 | AWSやAzureなどでの設計、オンプレミスからの移行 |
| IaC・自動化・SRE | Terraformなどでの構成管理、運用の自動化 |
| セキュリティ | ネットワークやクラウドのセキュリティ対策の設計・運用 |
| 運用・保守 | システムの監視や障害対応、運用の改善 |
とくに、クラウドや自動化、設計の経験を求める案件は、単価が高めになりやすい傾向があります。
フリーランスの年収と独立の条件
単価と年収の目安
フリーランスの収入は、月ごとの単価と、働いた月数で決まります。インフラエンジニアの案件の単価の目安は、次のとおりです。
| 担当する仕事 | 月単価の目安 |
|---|---|
| 運用・保守 | 40万〜60万円 |
| 構築 | 55万〜75万円 |
| 設計・構築 | 65万〜90万円 |
| クラウドの設計・アーキテクト | 80万円以上 |
単価は、フリーランス向けの案件の情報をもとにした目安で、経験や地域、案件によって大きく異なります。たとえば月単価70万円の案件に1年間参画すると、売上は840万円になります。
会社員における年収の相場は、[インフラエンジニアの年収]で解説しています。
手取りの考え方
フリーランスの売上は、そのまま自由に使えるお金ではありません。売上から、次のようなお金を自分で払う必要があります。
- 経費
パソコンや書籍、資格の受験料、通信費など。 - 税金
所得税や住民税、売上によっては消費税。 - 社会保険
国民健康保険と国民年金(会社員と違い、全額を自分で負担する)。
そのため、会社員の年収と同じ金額を売り上げても、手元に残るお金は会社員より少なくなることが多くあります。会社員の年収と比べるときは、税金や社会保険を差し引いた手取りで比べましょう。
独立に必要な条件
フリーランスとして安定して案件を得るには、次の条件をそろえておくことが大切です。
- 設計・構築の実務経験
一般的に3〜5年以上。運用・保守だけの経験では、選べる案件と単価が限られる。 - 一人で仕事を進められる力
指示を待たずに、要件の確認から作業、報告までを自分で進められる。 - 得意な分野
クラウド、ネットワーク、セキュリティなど、「この分野なら任せられる」と言える強み。 - 自分を管理する力
体調、スケジュール、お金、学習を、自分で管理できる。
運用・保守から設計・構築へ進む方法は、[運用・保守から設計・構築へ]で解説しています。
向いている人・向いていない人
| 向いている人 | 向いていない人 |
|---|---|
| 設計・構築の経験があり、得意な分野がはっきりしている | 経験が浅く、運用・保守が中心 |
| 自分で学び続けることが苦にならない | 研修や上司の指導のもとで学びたい |
| 収入の変動や手続きに自分で対応できる | 毎月の安定した収入を最も重視したい |
| 人脈や、案件を紹介してくれる取引先がある | 自分で案件を探すことに抵抗がある |
フリーランスとして独立するまでの進め方と注意点
独立までのステップ
フリーランスとして独立するまでは、一般的に次の流れで進めます。
設計・構築や、クラウドなどの得意分野の経験を積む。
担当したプロジェクトや技術、成果を、職務経歴書の形でまとめる。
案件が決まるまでや、報酬が入るまでの期間に備えて、数か月分の生活費を用意しておく。
フリーランス向けのエージェントに登録したり、知人や取引先に相談したりして案件を探す。
税務署に開業届を出し、青色申告の申請や、国民健康保険・国民年金への切り替えを行う。
経験の整理には、[インフラエンジニアの職務経歴書の書き方]の内容がそのまま使えます。
注意したいリスク
フリーランスとして働くうえで、次のリスクは事前に考えておきましょう。
| リスク | 備え方 |
|---|---|
| 案件が途切れる | 生活費の蓄えを持ち、複数の案件の探し方を持っておく |
| 年齢とともに案件が選びにくくなる | 設計やアーキテクトなど、経験が評価される仕事に移っていく |
| 学ぶ時間が取りにくい | 案件の合間や日々の時間で、新しい技術を学び続ける |
| 契約のトラブル | 契約の内容や、報酬の支払い時期を必ず書面で確かめる |
2024年11月には、フリーランスとの取引のルールを定めた「フリーランス・事業者間取引適正化等法(フリーランス新法)」が始まり、発注する企業に取引の条件をはっきり示すことなどが求められるようになりました。自分を守るためのルールを知っておくことも大切です。
インフラエンジニアのフリーランスでよくある疑問
Q.経験が浅くてもフリーランスになれる?
なれないわけではありませんが、おすすめはしません。運用・保守の経験だけでは、選べる案件が限られ、単価も上がりにくいためです。会社員として設計・構築の経験を積んでから独立するほうが、安定して働きやすくなります。
Q.会社員とフリーランス、どちらが得?
経験と働き方の希望によって変わります。設計・構築の経験があり、案件を安定して得られる人は、フリーランスのほうが収入が増えることがあります。一方、手取りや安定、学びの機会まで含めると、会社員のほうが合う人も多くいます。手取りと働き方の両方で比べて判断しましょう。
Q.フリーランスで年収1,000万円は目指せる?
目指せます。クラウドの設計やアーキテクトなど、単価の高い案件に1年間参画すれば、売上が1,000万円を超えることもあります。ただし、売上から税金や社会保険、経費を差し引いた手取りは、それより少なくなる点に注意しましょう。
Q.リモートの案件はある?
あります。クラウドの設計・構築や、IaCによる自動化の案件では、リモートで働ける案件も増えています。一方、データセンターでの作業や、機器の設置を伴う案件は、現地での作業が必要になります。
Q.フリーランスから会社員に戻れる?
戻れます。フリーランスで幅広い案件を経験したことは、転職で評価されることもあります。会社員に戻るときは、フリーランスとして担当した案件と成果を整理して伝えましょう。
転職の進め方は、[インフラエンジニアの転職]で解説しています。
まとめ
インフラエンジニアのフリーランスは、経験を活かして案件を選び、収入を高められる可能性がある働き方です。
この記事のポイントは次のとおりです。
- 働き方
企業と業務委託の契約を結び、案件ごとに仕事を請け負う。収入の安定や手続きも自分で担う。 - 単価の目安
運用・保守で40万〜60万円、設計・構築で65万〜90万円、クラウドの設計・アーキテクトで80万円以上が目安。 - 手取り
税金や社会保険、経費を自分で払うため、同じ売上でも会社員より手元に残るお金は少なくなりやすい。 - 独立の条件
設計・構築の実務経験、一人で仕事を進める力、得意な分野、自分を管理する力。 - 進め方
会社員として経験を積み、生活費を準備し、案件の探し方と開業の手続きを整えてから独立する。
フリーランスは、経験を積んだインフラエンジニアにとって魅力的な選択肢の1つです。まずは設計・構築の経験と得意な分野をはっきりさせ、会社員のうちに準備を進めるところから始めてみましょう。

