クラウドの普及や自動化、生成AIの広がりで、「インフラエンジニアの仕事はなくなるのでは」という声を聞くことがあります。結論からいえば、インフラエンジニアの需要はこれからも続きますが、求められる仕事の中身は大きく変わっていきます。
ここでは、インフラエンジニアの将来性を、需要が続く理由と「なくなる」と言われる理由から解説します。減っていく仕事と伸びる分野に加えて、これからも求められるエンジニアになるために今からできることもまとめました。
この記事で分かること
- インフラエンジニアの需要が続く理由と、「なくなる」と言われる理由
- これから減っていく仕事と、需要が伸びる分野
- 将来性を高めるために、今からできること
インフラエンジニアの将来性は高い?
需要が続く理由
インフラエンジニアの需要がこれからも続くと考えられる理由は、次の4つです。
| 理由 | 内容 |
|---|---|
| IT人材の不足 | 経済産業省の2019年の調査では、2030年にIT人材が最大で約79万人不足する可能性が示されている |
| クラウドへの移行 | システムをクラウドに移すたびに、設計や移行、運用の見直しが必要になる |
| セキュリティの強化 | テレワークの定着やサイバー攻撃の増加で、ネットワークとセキュリティの見直しが続いている |
| AIの広がり | AIの学習や運用に使うGPUの基盤や、データセンターの整備が進んでいる |
どんなサービスも、サーバーやネットワークといった基盤がなければ動きません。ITが使われ続ける限り、基盤を支える仕事はなくならないといえます。
ITエンジニアの中でのインフラエンジニア
ITエンジニアには、アプリを作る開発のエンジニアや、Webのエンジニアなど、さまざまな職種があります。その中でインフラエンジニアは、どの職種が作るシステムも動かす土台を担う仕事です。
使われる言語や開発のやり方は時代とともに入れ替わりますが、サーバー・ネットワーク・クラウドといった基盤は、どのシステムにも必要です。そのため、ITエンジニアの中でも、需要の波が比較的小さい職種といえます。
「インフラエンジニアはなくなる」と言われる理由
一方で、インフラエンジニアの仕事がなくなると言われるのには、次のような理由があります。
- クラウドの普及
機器を買って設置する仕事が減り、事業者が管理する範囲が広がっている。 - 自動化の広がり
構成をコードで管理するIaCや、作業を自動で行うツールが広く使われている。 - AIの活用
AIで監視や障害の分析を行うAIOpsや、生成AIによる設定作業の支援が進んでいる。
AIを使ってIT運用を効率化する仕組みは、[AIOpsとは]で解説しています。
なくなるのではなく、仕事の中身が変わる
これらの変化で減るのは、主に手作業でくり返し行う仕事です。一方で、クラウドやセキュリティ、AIの基盤など、新しい分野の設計や運用を担う仕事は増えています。
つまり、インフラエンジニアという仕事がなくなるのではなく、求められる役割が「手を動かす作業」から「仕組みを設計し、自動化する仕事」へと移っていくと考えるのが現実的です。
なくなる仕事と伸びる分野
減っていく仕事
次のような仕事は、クラウドや自動化、AIの広がりによって、少しずつ減っていくと考えられます。
| 減っていく仕事 | 理由 |
|---|---|
| 手順書どおりに1台ずつ設定する作業 | IaCや自動化ツールで、まとめて設定できるようになる |
| 画面を目で見て異常を探す監視 | 監視ツールやAIが、異常の検知と通知を自動で行う |
| 物理的な機器の設置・入れ替えだけの仕事 | クラウドの利用が広がり、自社で持つ機器が減る |
| 決まった手順をくり返す一次対応 | よくある障害は、自動で復旧する仕組みに置き換わる |
これらの仕事だけを続けていると、経験の幅が広がらず、選べる仕事が狭まってしまうおそれがあります。
需要が伸びる分野
一方で、次の分野は、これから需要が伸びていくと考えられます。
| 伸びる分野 | 主な仕事 |
|---|---|
| クラウド | AWS・Azure・Google Cloudでの設計、オンプレミスからの移行 |
| セキュリティ | ゼロトラストやSASEなど、新しい考え方にもとづくネットワークとセキュリティの設計 |
| 自動化・SRE | IaCでの構成管理や、コードと自動化によるシステムの信頼性の向上 |
| AIの基盤 | AIの学習や運用に使うGPUサーバーやデータセンターの設計・運用 |
| プラットフォームエンジニアリング | 開発者が使いやすい社内の基盤を作り、提供する |
どの分野も、サーバーやネットワークの経験を土台に広げられるのが特徴です。
詳しくは、[ゼロトラストとは]、[AIインフラエンジニアとは]、[プラットフォームエンジニアリングとは]で紹介しています。
これからも求められ続けるスキル
技術が変わっても、次のような力は変わらず求められます。
- ネットワークとOSの基礎
クラウドもAIの基盤も、土台はサーバーとネットワークの仕組み。 - 設計する力
要件から構成を考え、止まりにくく安全な仕組みをつくる力。 - 障害に向き合う力
原因を切り分け、再発を防ぐ仕組みを考える力。 - 人と調整する力
利用者や開発者と要件をすり合わせ、技術を分かりやすく説明する力。
新しい技術を学ぶときも、基礎がしっかりしている人ほど早く身につけられます。
将来性を高めるために今からできること
基礎に、伸びる分野を1つ掛け合わせる
サーバーやネットワークの基礎に、クラウド、セキュリティ、自動化、AIの基盤のうち1つを掛け合わせると、人材の少ない領域で強みを持てます。まずは、今の仕事に近い分野から選ぶと無理なく広げられます。
オンプレミスからクラウドへ進む方法は、[オンプレからクラウドへ]で解説しています。
自動化の力を身につける
手作業が減っていくなかで、作業を自動化できる人の価値は高まります。シェルスクリプトやPython、Ansible、Terraformなどを使い、今の仕事でくり返している作業を1つ自動化してみるところから始めましょう。
上流の工程に進む
自動化やAIで置き換わりにくいのは、要件を整理し、構成を考える上流の工程です。運用・保守が中心の人は、構築や設計に関わる機会を少しずつ増やしていきましょう。
具体的な方法は、[運用・保守から設計・構築へ]で解説しています。
経験に合わせた次の一歩
今の経験に合わせた、次の一歩の例は次のとおりです。
| 今の経験 | 次の一歩の例 |
|---|---|
| 運用・保守が中心 | 定型作業の自動化、構築の経験を積む、CCNAやLinuCで基礎を固める |
| 構築の経験がある | クラウドの資格を取る、IaCで構築する、設計に関わる |
| 設計の経験がある | クラウドやセキュリティの設計、AIの基盤など新しい分野に広げる |
今いる場所から1段ずつ広げるのが、無理のない進め方です。
キャリアの全体像は、[インフラエンジニアのキャリアパス]で整理できます。
インフラエンジニアの将来性でよくある疑問
AIでインフラエンジニアの仕事はなくなる?
すべてがなくなることはありません。AIは監視や障害の分析、設定作業の支援などを効率化しますが、どんな仕組みにするかを決めたり、AIの出した答えが正しいかを判断したりするのは人の役割です。AIを道具として使いこなせるエンジニアの価値は、むしろ高まっていきます。
クラウドが広がると、オンプレミスの仕事はなくなる?
すぐになくなることはありません。データを社外に出せないシステムや、大量の計算を長く続けるAIの基盤など、オンプレミスが選ばれる場面は今もあります。ただし、オンプレミスだけでなく、クラウドとの組み合わせも扱えることが、これからは求められます。
今からインフラエンジニアを目指しても遅くない?
遅くありません。IT人材の不足は続いており、未経験から運用・保守の仕事で経験を積み、構築や設計へ進む道もあります。最初からクラウドや自動化に触れておくと、将来性の高いキャリアを描きやすくなります。
40代・50代でも将来性はある?
あります。大規模なシステムの設計や障害対応、プロジェクトの取りまとめなど、経験を積んだエンジニアにしかできない仕事は多くあります。経験に加えてクラウドなどの新しい知識を身につけると、アーキテクトやマネージャーとして活躍の場が広がります。
将来性の高い資格は?
伸びる分野に合わせて選ぶのがおすすめです。クラウドならAWS認定などのクラウドの資格、セキュリティなら情報処理安全確保支援士、ネットワークならCCNPなどが代表的です。今の仕事に近い分野の資格から取ると、学んだことを実務ですぐに活かせます。
資格の選び方は、[インフラエンジニアのおすすめ資格一覧]で紹介しています。
まとめ
インフラエンジニアの需要はこれからも続きますが、求められる仕事の中身は変わっていきます。
この記事のポイントは次のとおりです。
- 需要が続く理由
IT人材の不足、クラウドへの移行、セキュリティの強化、AIの広がりで、基盤を支える仕事は増えている。 - なくなると言われる理由
クラウドの普及、自動化の広がり、AIの活用で、手作業の仕事が減っている。 - 減っていく仕事
1台ずつの設定作業、目視の監視、機器の設置だけの仕事、決まった手順の一次対応。 - 伸びる分野
クラウド、セキュリティ、自動化・SRE、AIの基盤、プラットフォームエンジニアリング。 - 今からできること
基礎に伸びる分野を掛け合わせ、自動化の力を身につけ、上流の工程に進む。
変化の大きい時代だからこそ、基盤を支えるインフラエンジニアの役割は大きくなっています。まずは今の仕事でくり返している作業を1つ自動化し、伸びる分野の学習を始めてみましょう。

